世界の片隅でひっそりと呟く

アラフィフのサラリーマンです

中国のラーメンは日本の盛り蕎麦である

昨日に続いて料理ネタです。

日本のネット上では「ラーメンの発祥は中国であるが、日本に伝わった後に日本人の創意工夫でオリジナルよりも美味しい料理になっている(中国人も認めている)」という主張が散見されます。これに対して異議を唱えるのが今回の私の主張です。

 

ラーメンは昨日の餃子とは違い、中国でも日本でも主食です。なので、論点は中国人にとって日本のラーメンが【中国のラーメンよりも美味しい】のかどうか、ということになります。

 

日本の麺類の生産量を調べたところ、ちょっと古いデータですが全国製麺共同組合連合会のサイトに平成18年のデータが載っていました。生めん類全体の生産量60万ktのうち中華麺が約半分の30万kt、うどんの23万ktを引き離してトップです。パスタや素麺のような乾麺は入ってませんが、乾麺を含めるならインスタントラーメンも入ってきますので更に差は広がるものと思われます。やはりラーメンは人気ですね。

中国はと言うと、さすがに調べられませんでした。なので体感になってしまいますが、ラーメンは中国では少数派です。中国語で【拉】という文字には伸ばすという意味がありまして、包丁で切ったりパスタのように押し出し整形した麺はラーメンとは呼ばれません。中国でラーメンと言えば蘭州拉麺というやつだけです。練った小麦粉の塊を両手でビヨーンと伸ばすあれです。注文受けてからビヨーンとやるので工場で作って持って来るというわけにはいかず、拉麺のお店には必ず専門の職人がいます。私は北京と山西省しか行ったことありませんが、少なくともこの2箇所では拉麺はかなりマイナーな存在です。北京では日本のラーメンのように切った麺やジャージャー麺のような麺(断面が丸いので押し出し整形でしょうか?)が多く、山西省では刀削麺のお店が多かったです。このいずれにも中華麺のコシの命である【かん水】は入ってません。なので食感が違います。切麺刀削麺は、ほうとうのような食感です。色も真っ白で、中華麺独特の香りもありません。

 

私もラーメン大好き人間の1人として一度は拉麺を食べてみたかったので、北京に行った時に早速蘭州拉麺を食べてみました。感想としては、麺の茹で具合は柔らかめ、スープは牛骨の淡麗系でかなり薄味。私はやはり日本のラーメンの方が好きですが、まあまあ美味しいと思いました。

周りを見ると、中国人の食べ方はレンゲに少しスープを入れてそこに麺を入れてちゅるんと食べてます。日本でも女の人がよくやる食べ方です。そして、麺を食べ終わったらあんまりスープ飲みません。薄味で飲みやすかったので私は全部飲みましたが、中国人はスープは残すのがデフォなようです。

 

本題はここから。

 

帰国してから蕎麦屋に行った時に、何気なく壁に貼ってある能書きを見ててふと気付きました。そこには「こだわりの蕎麦粉を使ってますので蕎麦の香りをお楽しみください」みたいなことが書いてありました。蕎麦つゆのことは何にも書いてありませんでした。ラーメン屋に行くと、ねじり鉢巻の店主が腕組みをした写真と共に、いかにスープにこだわっているかを延々と書いてあります。麺のことは少ししか触れてないか、全く書いてないか。つまり、蕎麦は麺が命、ラーメンはスープが命なわけです。

では中国の拉麺はどっちなのか。私が思うに、麺が命です。拉麺だけでなく、具の多い切麺牛肉麺以外はオカズも一緒に食べるのを想定してる感じです。スープは無しか、あっても薄味。もし日本の蕎麦をコッテリした豚骨スープに入れて出したら「これじゃ蕎麦の香りが分からないじゃないか!」と意識高い人が怒り狂うのが目に見えているように、中国の麺料理は麺の味を楽しむものであって濃い味は相応しくないわけです。

 

結論として「どっちが美味しいのか」と言ったら、中国人にとっては「たまには日本のラーメンも良いよね」という感じかと。もし中国に進出するなら、魚介系は売れないだろうからスープは豚骨で、塩分と脂は控えめで、麺の茹で具合は中国人の好みに合わせて柔らかめで。これなら勝負になるかと思います。

ホルホルは恥ずかしいから止めましょうね。