世界の片隅でひっそりと呟く

アラフィフのサラリーマンです

彭帥さん事件に見る中国共産党の未来

昨日から立て続けに彭帥さん関連のニュースが報道されました。

・中国国内で彭帥さん関連のニュースを放送中のNHK海外放送のニュース番組が放送中断

・彭帥さんがシンガポール紙の取材に応じ性的暴行被害を否定

共産党機関紙の記者がツィッターで彭帥さんがNBAスターの姚明と談笑している動画を配信

の3件です。

このうち性的暴行被害を否定したという件については全くその通りで、私も11月初めに最初の報道を見た時は性接待の強要でもされてたのかと思いましたが、後で告白文を読んだ限りではただの不倫です。愛人関係にあった高官の心変わりを責めただけで、暴行されたと読めるような記述はありませんでした。

不倫が原因で失脚した人と言えば山﨑拓さんを思い出します。日本では愛人がいたというだけで地位を奪われることはありません。当時の小泉首相も「私の監督不行届きで…」などと謝罪会見を開くこともなく、山﨑さんは選挙によって審判を受けて地位を失いました。今思えば愛人がいた政治家など珍しくもないのに性癖が特殊だという理由で山﨑さんだけが落選となったのは気の毒な気もしますが、それだけ『ヘンタイ』というレッテルは強いということでしょうか。性の多様化の公認が叫ばれている現代なら或いは… とも思いましたが、やはりあの風貌で『赤ちゃんプレイ』は気持ち悪すぎてダメですかね。

話が逸れましたので本題に戻ります。日本だったら週刊誌のネタにしかならないようなことが、何故こんな大事件になっているんでしょうか。彭帥さんが何らかの形で自由を奪われているのは確実でしょう。軟禁されているか、外出できたとしても公安の監視下にあるものと思われます。海外から批判される度に何故か政府系の機関から彭帥さんの映像が出て来るなんて怪しすぎます。本当に自由なら自由に取材を受けさせれば良かったんです。しかし、国民からニュースを遮断し、海外に対しては政府系の機関を通じて安全だとアピールする。どう見ても怪しいでしょう。何故こんなことをするのでしょうか。ただでさえウイグルや香港の件で人権軽視を批判されてて、それが大切なオリンピックにまで飛び火しているというのに、何故一個人である彭帥さんの件で批判されるようなことをするんでしょうか。彭帥さんが何か国家機密でも握ってるんでしょうか。そんなわけないですよね。では放っておけば良いんです。政府の威厳を棄損したなら、不倫した高官をクビにするだけで良いはずです。それなのに何故こんなに必死なんでしょうか。ここから見えるのは、中国共産党の余裕の無さです。

中国共産党と言えば、いかにも強権で無理矢理国内を押さえつけているようなイメージがありますが、実態は決してそれだけではありません。その基盤には国民からの支持があります。中国の歴史を見れば分かるとおり、中国人はそれほど権力に従順な人達ではありません。日本でも平安時代末の鎌倉幕府設立、鎌倉時代末の建武の新政から室町幕府の設立、明治維新など、何度か政権交代がありましたが、いずれも地方権力が前政権を倒すという形でした。しかし中国では農民自身が武器を取り、何度も政権を転覆させています。和をもって尊しとなす日本人とは違い、従順どころかどっちかと言うと武闘派です。これは私の推測ですが、中国共産党が恐れているのは外部の敵ではなく自国民です。人民解放軍がいかに巨大な戦力があったとしても11億人の人民が反乱を起こしたら敵いません。ムチだけではなくアメも与えているからこそ政権を維持できているわけです。ムチが公安による監視だとすれば、アメは経済成長です。『中国共産党に政権を任せておけば生活が良くなっていく』という期待感がアメとなって、わがままで自分勝手な国民達を繋ぎ止めているのだと思います。

結果的に彭帥さん事件で分かるのは『中国共産党が国民からの支持を失いかけている』ということです。実際に失いかけているかどうかは別として、中国共産党自身がそう考えているのではないかと思われます。支持されている自信があるなら「スケベなのが1人や2人いたってどうってことない」と考えて放置するはずだからです。今は何としてでも国民から批判されるようなことは避けたい、党の無謬性を保ちたい、という状況なのでしょう。つまり、ここ最近の失政を自覚しているということです。ファーウェイへの制裁やウイグル族への人権侵害での制裁に有効な反撃ができていないことや、もっと大きいのが石炭でオーストラリアに屈服してしまったことではないかと思われます。石炭の件では大規模な停電を発生させてしまったことで、国民にかなりの不満が生じたはずです。この国民の怒りを抑えるのに必死で、対外的な批判になどかまってられない状況なのではないかと思われます。

オバマ大統領との会談の時の習近平国家主席は自信満々に見えましたが、ここ最近の中国の声明はまるで朝鮮中央通信のように見えます。経済力は上昇してるはずなのに国際社会での地位は逆に低下しているように感じます。これを国民から見たら、前任者が作り上げた経済力を有効に使えていない、言い換えると、財産を食い潰しているだけに見えているのではないでしょうか。現在の中国共産党は、自らの地位を守るのに必死だと言うことです。

今後の中国共産党は、どこかで勝負に出るものと思われます。経済成長が鈍化して国民の不満が溜まったら、それを解消するために国家の威信を増大させる何かが必要です。その何かは台湾です。中国の得意技は、民兵をしつこく送り込んで相手がモグラ叩きに疲れるのを待ち、いつの間にか自分の勢力圏にしてしまうことです。南沙諸島ではこの方法で成功しましたし、インドにも日本(尖閣諸島)にも同じ作戦を使ってます。しかし台湾のような大勢の人が住んでいる島に対しては、この作戦は使えません。できれば実力行使を仄めかすだけで台湾が屈服してほしいと思ってるでしょうが、それでも引かなかったら攻撃するしかありません。自分が引いたら国民の不満が爆発するかもしれないからです。やるからには絶対に勝たなければならないので、今はその日のために大急ぎで軍備を拡張しているところでしょう。

この対処方法としては、こちらが徹底的に防備を固めて中国に「今なら勝てる」と思わせないことです。経済成長が鈍化してるのに軍備にお金を注ぎ込めば、ますます国内が苦しくなりますので、そのうち中国の国民が打倒してくれるでしょう。